2026年9月18日時点の最新データで解説
「決算が良かったのに株価が下がった」。米国株を始めたばかりの方が、いちばん戸惑う瞬間です。この記事では、そのナゾを最新データでほどきながら、10月から始まる次の決算シーズンを落ち着いて迎える方法をお伝えします。
米国の主な決算シーズンは年に4回やってきます。次は10月中旬スタートです。
米国の上場企業は、3か月ごとに「この期間にどれだけ売って、どれだけもうけたか」を発表します。これが決算(けっさん)です。多くの企業の発表が数週間に集中するため、その時期は決算シーズンと呼ばれます。
決算シーズンは、1年でいちばん株価がにぎやかに動く時期です。1日で株価が5%、10%と動く銘柄も珍しくありません。こわく感じるかもしれませんが、仕組みさえわかれば、むしろ企業の「本当の実力」がのぞける、いちばん面白い時期になります。
次の第3四半期(7月〜9月分)の決算シーズンは、大手銀行のJPモルガン・チェースが先陣を切ります。同社は2026年10月13日(火)の米東部時間午前7時ごろに結果を公表し、8時30分から説明会を開くと発表しています。ここから約1か月半、主要企業の発表が次々と続きます。
世界中の投資家が参考にしている米国のデータ会社FactSet(ファクトセット)の集計によると、2026年7月〜8月の決算シーズン(第2四半期分)は、歴史的に見ても強い結果でした。
86%
S&P500採用企業のうち、1株あたり利益が予想を上回った割合(過去5年平均は78%)
52.0%
前年同期と比べた利益の伸び(一部企業の特別な利益を除くと33.8%)
28.7%
次の第3四半期で予想されている利益の伸び(9月上旬時点)
S&P500とは、米国を代表する約500社でつくる株価指数のことです。その約9割近くが「予想より良い成績」を出したわけですから、かなりの好成績です。さらに、次の四半期についても前向きな見通しを出した企業が多く、FactSetによると第3四半期について業績見通しを上方向に出した企業の割合は63%で、過去5年平均の41%を大きく上回っています。
ここで1つ、おもしろいデータがあります。これほど好決算が続いたのに、予想を上回った企業の株価は、発表をはさんだ前後数日で平均わずか0.6%しか上がっていません。一方で、予想を下回った企業は平均で2.5%下がっています。
つまり、「良い決算=株価が上がる」という単純な話ではない、ということです。ここからが本題です。株価を本当に動かしているものは何なのか、3つのポイントで見ていきましょう。
決算の日、ニュースでよく見る言葉がEPS(イーピーエス)です。これは「1株あたり利益」のことで、会社のもうけを株の数で割った数字です。「1株を持っていると、いくら分のもうけにあずかれるか」と考えるとわかりやすいです。
そして、決算の前には、証券会社のアナリスト(企業を調べる専門家)たちが「今回のEPSはこれくらいだろう」という予想を出します。その平均をコンセンサス予想(市場の平均的な予想)と呼びます。
株価は、発表された数字そのものよりも、このコンセンサス予想とのズレに反応します。予想を上回ることを「ビート」、下回ることを「ミス」と呼びます。
テストの点数でたとえると
いつも100点を取る優等生が95点を取ると、周りは「あれ、どうしたの?」と心配します。逆に、いつも40点の子が70点を取ると「すごい!」と大騒ぎになります。点数だけなら95点のほうが上なのに、反応は正反対です。株価もこれと同じで、「どれだけ期待されていたか」が反応の大きさを決めます。
しかも、株価はすでに「そこそこ良い決算」を織り込んでいることが多いです。織り込むとは、発表前から投資家が結果を予想して、先に株価へ反映させてしまっている状態のことです。前回の決算シーズンで、ビートしても株価の上昇が小さかったのは、多くの投資家が好決算を最初から見込んでいたからだと考えられます。
前回のデータを表にまとめると、次のようになります。
| 決算の結果 | 2026年第2四半期の平均的な株価の動き | 過去5年の平均 |
|---|---|---|
| 予想を上回った(ビート) | プラス0.6% | プラス1.0% |
| 予想を下回った(ミス) | マイナス2.5% | マイナス3.0% |
出典:FactSet Earnings Insight(2026年8月28日)。発表の2日前から2日後までの平均的な値動き。
ここから読み取れるのは、ミスしたときの下げ幅のほうが、ビートしたときの上げ幅よりずっと大きいということです。期待が高いほど、少しのつまずきで大きく売られやすくなります。これを知っておくだけで、決算の日の値動きに振り回されにくくなります。
決算発表では、過去3か月の成績と一緒に、会社が「次の四半期や今年はこれくらい売れそうです」という見通しを出すことがあります。これをガイダンス(会社の業績見通し)と呼びます。
株式市場は「未来」にお金をかける場所です。だからこそ、過去の成績より、ガイダンスのほうが株価を大きく動かすことがよくあります。その代表例が、AI向け半導体で有名なエヌビディアです。
米メディアの24/7 Wall St.によると、エヌビディアは2026年8月の発表前までに5四半期連続で利益予想を上回っていたのに、そのうち4回は発表後に株価が下がっていました。同じ記事では、上回った幅と株価の方向にははっきりした関係が見られず、株価を動かしていたのはガイダンスだったと分析しています。
ところが、2026年8月26日の発表では流れが変わりました。米CNBCによると、同社は2028年度(2027年2月〜2028年1月)に売上高70%成長を見込むと示し、アナリストが想定していた44%を大きく上回りました。その結果、翌日の株価は9%近く上がり、時価総額(会社全体の値段)は約4400億ドル増えました。
同じ「予想を上回る決算」でも、見通しが期待どおりなら株価は下がり、期待を大きく超えれば一気に跳ね上がる。決算の日に見るべきは、過去の数字だけではないことがよくわかる例です。
もう1つ、前回の決算シーズンには大事な教訓がありました。FactSetによると、アルファベット(グーグルの親会社)とアマゾンの利益には、本業とは別の大きな投資の利益が含まれていました。アルファベットは保有株の値上がりなどで約980億ドル、アマゾンはAI企業Anthropicへの投資などで約534億ドルの利益を計上しています。
この2社を除くと、S&P500全体の利益の伸びは52.0%から33.8%に下がります。それでも十分に高い伸びですが、一時的な利益で数字が大きく見えているケースがあることは覚えておきたいところです。
初心者向けのシンプルな見分け方
ニュースで「利益が何倍に」と見たら、あわせて売上高がどれだけ伸びたかを確認してみてください。売上高は、投資の利益のような一時的な要因の影響を受けにくい数字です。利益だけが急に増えて売上高の伸びがふつうなら、特別な要因がないか一度疑ってみるのがおすすめです。
決算シーズンを乗り切るための最初の準備は、自分の持っている銘柄がいつ発表するのかを知ることです。日程は、証券会社のアプリや、海外の決算カレンダーサイト(Market ChameleonやNasdaq.comなど)で調べられます。
決算カレンダーを開くと、見慣れない略語が並んでいます。まずは次の4つを押さえましょう。
| 表示 | 意味 | ここを見る理由 |
|---|---|---|
| BMO | 取引が始まる前(米国の朝)に発表 | その日の取引開始と同時に株価が動く |
| AMC | 取引が終わった後(米国の夕方)に発表 | 時間外取引で動き、翌日の始値に反映される |
| Confirmed | 会社が正式に発表した日程 | 「Estimated(推定)」は過去の傾向からの予想なので変わることがある |
| Expected Move | オプション市場が見込む値動きの大きさ | 「上下どちらかに何%くらい動きそうか」の目安になる |
最後のExpected Move(予想変動幅)は少し難しい言葉ですが、とても便利です。オプションとは「株をあらかじめ決めた値段で売り買いできる権利」のことで、その値段から「プロたちが決算でどれくらい株価が動くと見ているか」を逆算できます。ただし、これは動く大きさの目安であって、上がるか下がるかの予想ではありません。
日本から米国株を持つ私たちにとって大事なのが、時差です。米国は2026年11月1日(日)にサマータイム(夏時間)が終わるため、10月と11月で時間が1時間ずれます。
| 発表のタイプ | 10月31日まで(夏時間) | 11月1日から(冬時間) |
|---|---|---|
| BMO(米国の朝7時ごろ発表の場合) | 日本時間の夜20時ごろ | 日本時間の夜21時ごろ |
| 米国市場の取引開始(9時30分) | 日本時間の夜22時30分 | 日本時間の夜23時30分 |
| AMC(米国の夕方16時すぎ発表) | 翌日の朝5時すぎ | 翌日の朝6時すぎ |
たとえばJPモルガンの10月13日の発表は、日本時間では10月13日の夜20時ごろになります。大手IT企業の多くは米国の取引終了後に発表するので、日本では「朝起きたら結果が出ている」ことが多くなります。
決算シーズンには、毎回ある程度決まった流れがあります。正確な日付は各社の正式発表で確認する必要がありますが、全体像をつかんでおくと先回りして準備できます。
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1
10月中旬:大手銀行がトップバッター
JPモルガン(10月13日)を皮切りに大手銀行が発表します。銀行は企業や個人のお金の流れを見ているので、米国経済全体の体温計として注目されます。
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2
10月下旬〜11月上旬:大手IT企業が集中する山場
マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ、アップルなどの巨大企業が続きます。株価指数への影響が大きいため、市場全体が大きく動きやすい期間です。
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3
11月下旬:エヌビディアがシーズンを締めくくる
エヌビディアは決算期がずれているため、例年は他社より遅く発表します。AI関連株全体の方向を左右する、最後の大イベントです。
ここまでの3つのポイントを、実際の決算で確認してみましょう。前回、7月14日に発表したJPモルガンの例です。
FactSetによると、同社の1株あたり利益は7.70ドルで、予想の5.59ドルを大きく上回りました。ところが、その中には1.56ドル分の一時的な利益が含まれていました。Market Chameleonのデータでは、発表の翌日の株価は2.5%の上昇にとどまっています。予想を約4割も上回ったように見えても、市場は一時的な部分を差し引いて冷静に受け止めた、と読むことができます。
このように、1つの決算ニュースは次の順番で読むと、ぐっと理解しやすくなります。
- EPSと売上高は、コンセンサス予想を上回ったか、下回ったか
- 利益の中に、投資の利益などの一時的な要因は含まれていないか
- ガイダンス(次の見通し)は、市場の期待より強いか、弱いか
- 株価の動きは、事前のExpected Move(予想変動幅)と比べて大きいか、小さいか
- 1日の値動きだけで判断せず、数日から数週間の流れを見たか
慣れてくると、決算ニュースが「ただの数字の羅列」から「企業と投資家の期待のぶつかり合い」に見えてきます。ここまで来ると、決算シーズンはこわいものではなく、1年で4回しかないワクワクする答え合わせの時間になるはずです。
最後に、長く資産運用を続けるための考え方を3つお伝えします。
1つ目は、決算の直前に1つの銘柄へまとめて大きく買わないことです。前回のデータのとおり、予想を少し下回っただけで大きく下がることがあります。買いたい銘柄があるなら、時期を分けて少しずつ買う方法なら、1回の決算の当たり外れに左右されにくくなります。
2つ目は、1日の値動きで「失敗した」と決めつけないことです。エヌビディアのように、決算のたびに株価が下がりながらも、長い目で見ると成長を続けていた例もあります。決算は企業の長い物語の1ページにすぎません。
3つ目は、投資信託やETFでの積立投資は、決算シーズンでも基本的に淡々と続けることです。ETFとは、株価指数などに連動するように作られた、株のように売買できる投資信託のことです。多くの企業に分散しているため、1社の決算による影響はやわらぎます。
- 株価は、決算の結果そのものではなく、コンセンサス予想(市場の平均的な予想)とのズレに反応します。
- 過去の成績より、ガイダンス(これからの見通し)が株価を大きく動かすことがよくあります。
- 前回はビートした企業の株価上昇が平均0.6%、ミスした企業の下落が平均2.5%と、下げのほうが大きくなりました。
- 発表日程は、日にち、BMOかAMCか、正式決定かどうかをセットで確認し、日本時間に直しておきましょう。
- 次のシーズンは10月13日のJPモルガンから。日本時間では同日の夜20時ごろです。
決算シーズンの仕組みがわかると、ニュースの見え方が変わり、米国株投資がもっと面白くなります。まずは、自分が持っている銘柄の次の発表日を、今日カレンダーに書き込むところから始めてみませんか。
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。数値は2026年9月18日時点で確認できた公開情報にもとづきます。発表日程は変更される場合があるため、最新の情報は各社の投資家向けページでご確認ください。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。



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