米国株の配当、実は二重課税されています。100万円が71万円になる仕組みと取り戻し方

海外株投資

米国株を持っていて、証券口座の入金明細をよく見たことはありますか。「1株あたり1ドルの配当が出ます」と発表された銘柄を100株持っていたのに、口座に入ってきたのは100ドルではなく71ドル台だった。そんな経験がある方は少なくないはずです。

実はこの差、為替でも手数料でもありません。米国と日本の両方で税金が引かれる「二重課税」が起きているのです。

そして面白いのはここからです。この引かれすぎた分は、条件を満たせば取り戻せます。さらに、多くの人が「完全非課税」と思っているNISAには、実は取り戻せない税金が残っているという意外な落とし穴があります。この記事では、その仕組みと対処法を、数字を追いながら順番にほどいていきます。

配当100万円が71万円になる。まずは全体像をつかむ

最初に、お金が減っていく順番を見ていきましょう。日本に住んでいる人が米国の会社から配当を受け取ると、税金は2回に分けて引かれます。

1つ目の関門:米国

米国の会社が配当を出す時点で、税率10パーセントが天引きされます。ここは自動的に引かれるので、投資家が手続きをする場面はありません。

2つ目の関門:日本

米国で引かれた後の残り金額に対して、日本の税率20.315パーセントがかかります。証券会社が自動で差し引いて入金します。

手元に残るのは

2つの関門を抜けた結果、残るのは約71.7パーセント。つまり合計で約28.3パーセントが税金として消えていることになります。

言葉だけだとピンとこないので、税引き前の配当が100万円だったケースで計算してみます。

段階 計算 残る金額
税引き前の配当 会社が発表した配当額 1,000,000円
米国で10パーセント天引き 100万円 かける 10パーセント = 10万円 900,000円
日本で20.315パーセント課税 90万円 かける 20.315パーセント = 182,835円 717,165円
最終的な手取り 実効税率 約28.3パーセント 717,165円

日本株の配当なら20.315パーセントで済むところが、米国株だと約28.3パーセント。差は8パーセント近くあります。100万円の配当なら約8万円、20年積み重なれば無視できない金額です。

用語のかみくだき:20.315パーセントの中身

日本の株式や配当にかかる税率20.315パーセントは、所得税15パーセント、復興特別所得税0.315パーセント、住民税5パーセントの合計です。復興特別所得税は東日本大震災の復興財源として、所得税額に2.1パーセントを上乗せしているもので、15パーセントの2.1パーセント分が0.315パーセントにあたります。

そもそも、なぜ2つの国から取られるのか

税金の世界には、大きく2つの考え方が同時に存在しています。1つ目は「稼いだ場所の国が取る」という考え方、2つ目は「住んでいる国が取る」という考え方です。

米国株の配当は、米国の会社が米国で稼いだ利益から出ます。だから米国は「うちの国で生まれた所得だから課税する」と言います。一方、日本は「あなたは日本に住んでいるのだから、世界中のどこで稼いだ所得でも日本で課税する」と言います。両方の理屈が同時に正しいので、そのままだと同じ1つの配当に2回課税されてしまうのです。これが二重課税の正体です。

実は10パーセントは、かなり優遇された数字です。米国の税法では、外国に住む人が受け取る配当に対する源泉徴収税率は本来30パーセントと決められています。それが10パーセントで済んでいるのは、日本と米国のあいだに租税条約(お互いの国の税金の取り合いを整理する国どうしの約束)が結ばれているからです。日本の証券会社を通じて米国株を買う場合、この条約の適用は口座開設時の書類提出で完了しているため、あらためて手続きをする必要はありません。

ちなみに、この税率は国によって大きく違います。英国は配当への源泉徴収が原則ゼロ、中国本土の企業は10パーセント、台湾は21パーセントというように差があります。同じ「外国株の配当」でも、手取りの感覚がまったく変わってくるわけです。

取り戻す方法その1:外国税額控除という制度

ここからが本題です。日本の税制には、この二重課税を解消するための外国税額控除という仕組みが用意されています。所得税法95条にもとづく制度で、外国で払った税金の分だけ、日本の税金を減らしてくれるものです。

ポイントは、これが「所得控除」ではなく「税額控除」だという点です。所得控除は税金を計算する前の所得を減らすもので、効果は税率分だけです。税額控除は計算し終わった税金そのものから直接引くので、効き目がまったく違います。10万円の外国税額控除が使えれば、日本の税金が10万円まるごと減るイメージです。

全額が戻るとは限らない。控除限度額という上限

ただし、無条件に全額戻るわけではありません。取り戻せる金額には上限があり、これを控除限度額と呼びます。国税庁が定める計算式は次のとおりです。

所得税の控除限度額

その年の所得税額 かける (その年の国外所得金額 わる その年の所得総額)

つまり、全体の所得のうち海外で稼いだ割合の分だけ、日本の所得税を減らせるという考え方です。

そして、この所得税の枠で引ききれなかった分は、消えてしまうわけではありません。次の順番で、ほかの税金からも差し引けます。

  1. 1
    所得税から控除
    上の計算式で出した限度額まで引きます。
  2. 2
    復興特別所得税から控除
    その年の復興特別所得税額に、同じ割合をかけた金額が限度です。
  3. 3
    道府県民税から控除
    所得税の控除限度額の12パーセントが上限です。
  4. 4
    市町村民税から控除
    所得税の控除限度額の18パーセントが上限です。
  5. 5
    それでも余ったら3年間くり越し
    使いきれなかった分も、引ききれる枠が余った分も、翌年以降3年間もち越せます。
具体例で計算してみる

数字があると一気にイメージしやすくなります。次のような会社員の方を想定してみましょう。

  • ・給与にかかる所得(給与所得)が500万円
  • ・米国株の配当が税引き前で100万円、米国で10万円が天引き済み
  • ・配当は申告分離課税を選んで確定申告する
  • ・各種控除を引いた後の所得税額が、配当分も含めて約50万円
控除の段階 限度額の目安 この段階で引ける額
所得税 50万円 かける (90万円 わる 590万円)= 約7.6万円 約76,000円
復興特別所得税 復興税額 かける 同じ割合 約1,600円
道府県民税 7.6万円 かける 12パーセント = 約9,100円 約9,100円
市町村民税 7.6万円 かける 18パーセント = 約13,700円 約13,300円
合計 米国で引かれた10万円に対して 約100,000円(ほぼ全額)

このケースでは、住民税まで使うことでほぼ全額を取り戻せる計算になります。ただし注意したいのは、住民税から引かれる分は還付金として振り込まれるのではなく、翌年度の住民税が安くなるという形で返ってくる点です。「申告したのに思ったほど戻ってこなかった」と感じる原因の多くはここにあります。

逆に、所得が少なくて所得税額そのものが小さい方、たとえば配当以外にほとんど所得がない方は、控除限度額が小さくなるため取り戻せる割合も下がります。金額は人それぞれ、というのが正直なところです。

手続きは確定申告。必要な書類は2つ

外国税額控除を使うには、年末調整では完結せず、必ず確定申告が必要です。会社員の方も自分で申告書を作ることになります。申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日ごろまで(土日の関係で数日ずれます)。用意するものはシンプルです。

  • ✓外国税額控除に関する明細書(居住者用)。国税庁の確定申告書等作成コーナーで案内に沿って入力すれば自動で作られます。
  • ✓外国所得税を課されたことを証明する書類。証券会社が発行する年間取引報告書や配当金の支払通知書がこれにあたります。外国所得税額が記載されている欄を確認してください。

見落としやすい落とし穴:確定申告は住民税や保険料にもつながっている

かつては、所得税では確定申告して外国税額控除を受けつつ、住民税では「申告不要」を選んで国民健康保険料の増加を避ける、という合わせ技が使えました。しかし令和4年度の税制改正により、令和6年度の住民税(令和5年分の所得)からは、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなりました。

つまり、配当を確定申告すると、その配当所得は住民税の計算にも自動的に含まれます。その結果、国民健康保険料や介護保険料が上がったり、配偶者控除や扶養の判定、自治体の各種サービスの所得制限に影響が出たりする可能性があります。とくに自営業の方、フリーランスの方、扶養に入っている方は、取り戻す金額と保険料の増加額を見くらべてから判断したいところです。

もう1つ、意外と知られていないのが配当控除は米国株には使えないという点です。日本株の配当を総合課税で申告すると配当控除という優遇が受けられますが、これは日本の法人が払った法人税との二重課税を調整する制度なので、外国法人である米国企業の配当は対象外です。「総合課税で申告すれば配当控除で得をするのでは」という発想は、米国株では通用しないと覚えておいてください。

取り戻す方法その2:自動で調整してくれる商品を選ぶ

「確定申告は面倒だし、保険料への影響も気になる」という方に知っておいてほしいのが、投資信託等の二重課税調整制度です。2020年1月1日以降に支払われる分配金から始まった仕組みで、証券会社と運用会社が自動で調整してくれるため、投資家は何もしなくて構いません。

やっていることは、外国税額控除とよく似ています。分配金のもとになった金額に、ファンドが海外で払った税金をいったん足し戻し、その合計に対して日本の税金を計算したうえで、すでに払った外国の税金を差し引く。結果として、二重に取られていた部分が解消されるという流れです。

対象になるもの 対象にならないもの
国内籍の投資信託(外国資産に投資し、分配金を出しているもの) 米国に籍を置くETF(VTI、VYM、SPYDなど)
東証などに上場している国内籍ETF、REIT、JDR(株式数比例配分方式を選んでいる場合) 米国の個別株を直接持っている場合
分配金が普通分配金として支払われた部分 元本払戻金(特別分配金)の部分
課税口座(特定口座、一般口座) NISA口座、旧ジュニアNISA口座

つまり、同じS&P500に連動する商品でも、米国上場のETFを買うか、東証上場の国内籍ETFを買うかで、確定申告の手間がまったく変わるということです。手続きを最小限にしたい方にとって、東証上場の外国株式ETFは現実的な選択肢になります。

ただし完璧ではありません。この調整は所得税の部分で行われるもので、住民税には調整の仕組みがありません。そのため、外国税がまるごとゼロになるわけではない点は押さえておきましょう。

本題:NISAに潜む3つの落とし穴

さて、ここまで読んでくださった方なら、もう気づいているかもしれません。NISAは日本の税金が非課税になる制度です。では、米国で引かれた10パーセントはどうなるのでしょうか。

答え:引かれたまま、戻ってきません。

NISA口座で米国株や米国ETFの配当を受け取ると、米国の10パーセントは通常どおり天引きされ、日本側だけが非課税になります。手取りは税引き前の90パーセントです。

落とし穴の1つ目:外国税額控除が使えない

理屈はシンプルです。外国税額控除は「二重課税されているから調整しましょう」という制度です。NISAでは日本側の税金がゼロなので、そもそも二重課税が成立していません。日本の税金がかかっていない以上、そこから差し引くものがないのです。制度の作りとしては筋が通っているのですが、投資家からすれば10パーセントが取り戻せない事実だけが残ります。

落とし穴の2つ目:二重課税調整制度も対象外

先ほど紹介した、投資信託の自動調整制度も同じ理由でNISAには適用されません。東証上場の外国株式ETFをNISAで買っても、外国税の分は自動調整されず、そのまま引かれた状態になります。「東証上場のETFなら自動で調整されるから安心」という理解は、課税口座でのみ正しい話だということです。

落とし穴の3つ目:分配金を出さない投資信託でも、内部では引かれている

これはとくに見落とされがちな点です。分配金を出さないタイプの米国株インデックス投資信託を積み立てている方も多いと思います。分配金が出ないので配当課税とは無縁に見えますが、ファンドが米国株から配当を受け取る段階で、米国の源泉徴収はすでに発生しています。その分だけ基準価額の成長がわずかに抑えられているわけです。目に見えないだけで、コストは確実に存在します。

とはいえ、これは分配金を出さないファンド特有の弱点ではありません。米国株に投資する以上、どの入れ物を使っても米国の源泉徴収からは逃れられない、というのが実態に近い理解です。

では、NISAは損なのか。3パターンを並べて比べる

ここで、よくある誤解に触れておきます。「NISAでは10パーセントが取り戻せないのだから、高配当株は特定口座のほうが有利」という話を見かけることがあります。本当にそうでしょうか。税引き前100万円の配当で、実際に計算して確かめてみましょう。

口座と対応 米国の税 日本の税 手取り 実効税率
特定口座(何もしない) 10万円 182,835円 717,165円 約28.3パーセント
特定口座(外国税額控除を全額適用) 実質0円 182,835円 817,165円 約18.3パーセント
NISA口座 10万円 0円 900,000円 約10パーセント

数字はきれいに答えを出してくれます。外国税額控除を全額使えたとしても、NISAの手取りには届きません。その差は約8万円です。しかも外国税額控除は控除限度額の制約で全額使えないことも多く、手続きの手間や住民税、保険料への影響も発生します。

さらに、この比較は配当だけの話です。NISAでは値上がり益も非課税になりますが、特定口座では値上がり益にも20.315パーセントがかかります。トータルで見れば、米国株の配当についてもNISAを優先する判断は多くの場合で理にかなっています。NISAの落とし穴とは「NISAが不利になる」という意味ではなく、「完全非課税だと思っていると計算が狂う」という意味なのです。

覚えておきたい優先順位の考え方

1つ目に、NISAの枠は優先的に使う。日本側20.315パーセントの非課税メリットが、米国10パーセントを取り戻せないデメリットを上回るためです。2つ目に、NISAの枠を使いきった分は課税口座へ回し、そこで外国税額控除を検討する。3つ目に、確定申告の手間を減らしたい場合は、課税口座では東証上場の外国株式ETFを使って自動調整に任せる。この3段構えが、多くの方にとって現実的な整理になります。

商品タイプ別の早見表

同じ「米国株に投資する」でも、どの商品をどの口座で持つかによって手続きと手取りが変わります。整理しておきましょう。

商品タイプ 課税口座での対応 NISA口座での対応
米国の個別株 確定申告で外国税額控除 米国10パーセントは取り戻せない
米国籍のETF 確定申告で外国税額控除 米国10パーセントは取り戻せない
東証上場の外国株式ETF 二重課税調整で自動対応 自動調整は適用されない
分配金あり国内投資信託 二重課税調整で自動対応 自動調整は適用されない
分配金なし国内投資信託 配当課税は発生しないが、ファンド内部で米国税は発生 同左。値上がり益は非課税
2027年からの変更点も押さえておく

最後に、知っておくと差がつく最新の動きに触れておきます。2027年1月1日以後の所得から、防衛特別所得税という新しい税金が導入されます。防衛費の財源に充てるためのもので、税率は基準となる所得税額に対して1パーセントです。

名前のインパクトが強いのですが、あわてる必要はありません。同時に復興特別所得税の税率が2.1パーセントから1.1パーセントへ引き下げられます。防衛1パーセントと復興1.1パーセントを足すと2.1パーセントとなり、これまでと同じ水準です。

時期 内訳 合計税率
現在(2026年時点) 所得税15パーセント、復興0.315パーセント、住民税5パーセント 20.315パーセント
2027年1月以降 所得税15パーセント、復興0.165パーセント、防衛0.15パーセント、住民税5パーセント 20.315パーセント

つまり、株式の売却益や配当にかかる税率は当分のあいだ変わりません。ただし1点だけ注意があります。復興特別所得税の課税期間が2037年から2047年へ10年延長されます。単年の負担は同じでも、生涯で払う総額は増える構造です。20年30年という長い時間軸で資産形成をする方にとっては、頭の片隅に置いておきたい変化です。

今日からできる確認リスト
  • ✓証券口座にログインして、配当金の支払通知書に「外国所得税額」の記載があるか確認する
  • ✓その米国株や米国ETFが、NISA口座と課税口座のどちらに入っているかを確認する
  • ✓課税口座に高配当の米国資産があるなら、外国税額控除で取り戻せる額をざっくり試算する
  • ✓自営業やフリーランス、扶養に入っている方は、申告による住民税や保険料への影響も合わせて考える
  • ✓手続きを減らしたいなら、課税口座の新規買い付けを東証上場の外国株式ETFに切り替える選択肢を検討する
  • ✓NISAの枠が余っているなら、まずそこから埋めることを最優先で考える
この記事のまとめ
  • ▶米国株の配当は米国で10パーセント、日本で20.315パーセントが引かれ、実効税率は約28.3パーセントになります
  • ▶課税口座なら確定申告の外国税額控除で取り戻せますが、控除限度額という上限があります
  • ▶住民税から控除される分は、還付ではなく翌年度の住民税が安くなる形で戻ります
  • ▶東証上場の外国株式ETFや国内投資信託なら、二重課税調整制度で自動的に処理されます
  • ▶NISAでは米国の10パーセントが残り、外国税額控除も二重課税調整も使えません
  • ▶それでも手取りで比べればNISAが有利なケースが多く、まずNISAを優先する考え方が基本です
  • ▶2027年から税の内訳が変わりますが、20.315パーセントという合計税率は当面据え置かれる見込みです

税金の話は地味に見えますが、実は投資成績にじわじわ効いてくる領域です。相場の予測は誰にもできませんが、税金の仕組みは調べれば必ず答えが出ますし、知っているだけで手取りが変わります。これほど再現性の高い改善策は、資産運用の世界でもそう多くありません。まずは自分の口座を開いて、配当明細を1枚確認してみてください。そこから景色が変わります。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。税制は改正される場合があり、また個別の申告判断は年間の所得状況や口座区分によって結果が変わります。実際の申告にあたっては、最新の情報を国税庁のウェブサイトで確認するか、税務署や税理士にご相談ください。投資の最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。

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