バフェットが買い続ける日本の総合商社。海外投資家が「割安」と見た本当の理由を、初心者向けに解説します

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バフェットが買い続ける日本の総合商社。海外投資家が「割安」と見た本当の理由を、初心者向けに解説します

買い続けているのは、なぜ日本の商社なのでしょうか。割安さの正体と、いま気をつけたい点を、数字を交えてやさしくお話しします。

本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。数字は2026年10月上旬までに確認できた報道や各社の開示をもとにしており、株価や指標は日々動きます。投資の判断はご自身で行ってください。

2020年8月、世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米国の投資会社バークシャー・ハサウェイが、日本の5大商社の株を5%超まで買い進めていたと発表しました。5大商社とは、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の5社のことです。

それから6年たった2026年9月、バフェット氏から社長(CEO)を引き継いだグレッグ・アベル氏が、米国のテレビ番組で「この投資は長く持つもので、何十年も持ち続けるつもりです」という趣旨の話をしました。さらに、日本の商社業界団体のトップは、バークシャーが持ち株を増やすことも考えているようだと明かしています。

ここで、素朴な疑問がわいてきませんか。世界一有名な投資家が、なぜ日本の商社に何年も惚れ込み続けているのでしょうか。そして、いまからでも「割安」と言えるのでしょうか。

この記事では、海外投資家の目に映る「割安さの正体」を3つに分けて、投資の経験が少ない方にもわかるようにお話しします。むずかしい用語は、その場でかみ砕いて説明しますので、安心して読み進めてください。

この記事のポイント
  • ●海外の投資家が商社を「割安」と見てきた理由は、複雑さ、資源価格の波、日本株全体の評価の低さの3つです
  • ●バフェット氏が気に入った強みは、稼ぐ力と株主への還元、円の低い金利で借りられること、長く付き合えるパートナー関係です
  • ●ただし、株価の上昇もあり、割安さは2020年ごろより小さくなっている可能性があります。リスクも知っておきましょう

まずは基本から。総合商社ってどんな会社?

総合商社は、石油や鉄鉱石などの資源、食料、機械、化学品、電力、生活用品まで、あらゆる分野で商売をしている日本独特の大きな会社です。もともとは「モノを売りたい人」と「買いたい人」の間に入って手数料を得る仕事が中心でした。

いまは、世界中の会社や事業に出資して、自分たちも経営に加わりながら利益を得る形が大きくなっています。つまり、事業をたくさん持つ投資会社に近い存在です。バフェット氏は2023年に日本の新聞社の取材で、商社はバークシャーとよく似ているという趣旨の話をしています。バークシャー自身も、保険や鉄道、電力などをたくさん持つ会社だからです。

ポイント1 海外投資家が見た「割安さの正体」は3つあります

株の世界で「割安」とは、会社の実力に比べて株価が低い状態のことです。では、実力があるはずの商社が、なぜ長い間安く放置されてきたのでしょうか。海外の分析会社や投資家の見方を整理すると、理由は大きく3つに分かれます。

正体 1つ目

事業が複雑すぎる

商社は数百もの事業や出資先を持っており、外から見ると会社全体の価値がつかみにくいのが弱点でした。海外の分析会社は、この複雑さが株価の評価を下げる一因だと指摘しています。いろいろな事業を持つ会社が、事業の合計より安く評価される現象を「コングロマリット・ディスカウント」と呼びます。

正体 2つ目

利益が資源価格で上下する

石油や鉄鉱石、銅などの値段が下がると、商社の利益も減りやすくなります。景気や商品相場の波に左右されるため、投資家は「安定して稼げる会社に比べて、低い評価でないと不安」と考えがちです。

正体 3つ目

日本株全体への低い評価

日本株は長い間、世界の株に比べて評価が低めでした。会社が持つお金に対して、稼ぐ力が弱かったからです。これは「日本ディスカウント」と呼ばれ、商社だけでなく日本株全体にかかっていました。

ここで3つの用語を押さえましょう

  • ●PER(株価収益率) 株価が1年分の利益の何倍かを示す数字です。低いほど、利益に対して株価が安い目安になります
  • ●PBR(株価純資産倍率) 株価が会社の純資産(会社が持つ資産から借金を引いた額)の何倍かを示します。1倍を割ると、会社の帳簿上の価値より株価が低い状態です
  • ●ROE(自己資本利益率) 株主から預かったお金を使って、1年でどれだけ利益を出したかを示します。日本では、ROEが8%くらいあるとPBR1倍が見えてくる、という見方がよく語られます

バフェット氏は、初めて商社株を買ったころの印象を、のちにテレビ番組で振り返っています。当時の商社は、利益を株価で割った「利益利回り」が14%ほどで、しかも配当は増えていく見込みだったそうです。利益利回りが14%とは、100円で買うと、1年で約14円分の利益を生む計算です。PERにすると約7倍で、バフェット氏自身が、この安さにとまどったと語っています。

さらに、風向きを変えたのが東京証券取引所の改革です。東証は2023年ごろから、PBRが1倍を割っている会社に、資本を効率よく使うよう強く求めました。日本取引所グループの資料では、東証プライム市場でPBR1倍割れの会社は、2022年7月の時点から23ポイント減って、2026年3月に約27%まで下がっています。会社が自社株買いや増配を進め、「株主を大切にする流れ」が広がったことが背景にあります。

商社は、この流れの優等生とも言える存在でした。次のポイントで、バフェット氏が具体的に何を評価したのかを見ていきましょう。

ポイント2 バフェット氏が見抜いた、商社の3つの強み

バークシャーが商社に惹かれた理由は、「安いから」だけではありません。報道や本人たちの発言から、3つの強みが見えてきます。

1つ目 稼ぐ力と、株主へのお返しの大きさ

バフェット氏は2025年の株主への手紙で、日本の商社は役員の報酬がとても控えめで、株主への姿勢が好ましいという趣旨のことを書いています。実際に、5社とも「累進配当」という方針を続けています。累進配当とは、配当を減らさず、同じか増やしていくと約束する考え方です。

業績も力強いです。2026年3月期は、伊藤忠商事、住友商事、丸紅が過去最高の利益を更新しました。三菱商事と三井物産は、前の年にあった一時的な利益の反動で減益でしたが、2026年4月から6月の期間は、5社そろって最終利益が増えています。伊藤忠商事の2026年3月期の純利益は9,003億円で、5社の中で最も大きい数字でした。

2つ目 円の低い金利でお金を借りられる強み

これは、ほかの投資家があまり注目しないポイントです。バークシャーは、日本で円建ての社債を出して、低い金利でお金を集め、そのお金で商社株を買ってきました。米国の経済誌フォーブスの日本版によると、年率1%を下回る低いコストで借りた一方で、商社は年4%ほどの配当を払っていたといいます。

たとえ話で考えてみましょう(数字は説明用の仮のものです)

1%の金利で100万円を借りて、配当が4%の株を買ったとします。1年で、配当が4万円、利息が1万円です。差し引き3万円が、株価が動かなくても残る計算になります。バークシャーは、この仕組みを大きな金額で使ってきました。

実際の数字も出ています。バークシャーは2025年の株主への手紙で、日本の投資から約8億1,200万ドルの配当を受け取る見込みだと説明しています。一方、円建て債の利息は2025年で約1億3,500万ドルでした。配当のほうがずっと大きい構図です。

ただし、いまは日本の金利が上がっています。2026年9月には、日本の10年国債の利回りが約3%まで上がりました。これについてアベル氏は、商社5社のどこも「根本的な問題」とは見ていないと話しています。それでも、金利の動きは今後も大事なチェック項目です。

3つ目 長く付き合えるパートナー関係

バークシャーは、最初に「持ち株比率は10%以内にとどめる」と約束していました。しかし、2026年に入ってその上限を5社の同意のもとで引き上げ、5社すべてで10%を超えています。日本の商社業界団体のトップである岡藤正広氏(伊藤忠商事の会長)は、バークシャーは15%まで上がっても構わないという考えを示したと話しています。

岡藤氏は、バークシャーが商社の持つ世界的なネットワークや資金の使い方のうまさを、ライバルが簡単にまねできない「経済の堀」だと評価していると語っています。堀とは、お城を守る水路のように、競争相手が簡単に入ってこられない強みのことです。また、バークシャーは商社の事業にあれこれ口を出さない、とも述べました。会社側にとっても、安心して長く付き合える株主なのです。

ポイント3 では、「割安さ」はいまも残っているのでしょうか

ここは、記事を書くうえでいちばん大事にしたい部分です。バフェット氏が買い始めたころは、PERが約7倍と言われていました。では、いまはどうでしょうか。

2026年9月に公開された海外の分析記事では、5社のPER(株価収益率)は、住友商事の約13.7倍から三菱商事の約20.9倍までの幅にありました。この記事は、5社すべてが同サイトの試算する「適正価格」より上にあり、下振れの幅は3.9%から17.2%と見積もっています。以前、別の分析会社が「20%以上割安」と評価していたころと比べると、株価が上がって、割安さは小さくなったとみられます。

もちろん、評価は分析する人や使う数字で変わります。PERが高めに見えるのは、一時的に利益が減った影響もあるかもしれません。それでも、少なくとも「誰が見ても割安」と言えた2020年ごろとは、状況が違うことは知っておきたいところです。

一方で、良い変化もあります。商社は、利益の質を高める努力を続けてきました。自社株買いや増配が続いていること、そして東証の改革で日本株全体の見られ方が変わってきたことは、割安さを縮める力として働いています。株価が上がった理由は、「評価が見直された」という前向きなものでもあるのです。

2026年9月の株価の動き

2026年9月3日、アベル氏の「何十年も持つ」という発言を受けて、東京市場では5社の株がそろって上がりました。報道によると、前場の終わりの時点で、三菱商事は約4.8%、三井物産は約4.1%、住友商事は約3.0%上昇しています。長く持つ方針が伝わると、「バフェット氏が売るのでは」という心配が和らぎ、株が買われたとみられます。

具体例 数字で見る、バークシャーと5大商社

バークシャーの動きを年表で追う

時期出来事
2019年7月バークシャーが5社の株を買い始める
2020年8月5社の株を、それぞれ5%超まで買ったと発表。このときの投資額は約65億ドル
2023年4月バフェット氏が来日して5社のトップと面会。持ち株を増やす意向を示す
2024年末日本株の保有額が約235億ドルに到達
2026年1月追加の投資を含めた総投資額約138億ドルが、約380億ドルの価値に(フォーブス報道)
2026年5月住友商事と丸紅でも持ち株比率が10%を超え、5社すべてが10%超に
2026年9月アベル氏が「何十年も保有する」と発言。さらに買い増しも検討との報道

出典:日本経済新聞、Seeking Alpha、フォーブス ジャパン、ブルームバーグ、CNBC、ジャパンタイムズなどの報道をもとに作成

5社の特徴を比べてみましょう

会社2026年3月期の動きPER(9月上旬)ROEひとこと
三菱商事減益(前期の一時要因の反動)約20.9倍約9.7%資源から食品、機械まで幅広い。5社の中では高いPER
三井物産減益(前期の一時要因の反動)約15.5倍約11.3%金属資源やエネルギーに強い
伊藤忠商事最高益を更新(純利益9,003億円)約16.6倍約14.5%ROEが5社で最も高い。生活分野に強い
住友商事最高益を更新約13.7倍記載なし5社の中ではPERが最も低い。ただし借入れの多さに注意との指摘も
丸紅最高益を更新約14.4倍約14.3%売上の伸びが約10%と目立つ

出典:各社の決算を整理した解説記事、Investing.com(2026年9月)。PERとROEは算出方法や時点で変わります。伊藤忠商事は2026年1月に1対5、住友商事は2026年7月に1対4の株式分割を行っており、株価をそのまま過去と比べないようご注意ください

初心者が最初に確認したい3つのステップ

  1. 1

    PER、PBR、ROEをセットで見る

    PERが低くても、ROEが低いままでは「安いだけの会社」かもしれません。安さと稼ぐ力は、必ずセットで確かめましょう。

  2. 2

    配当と自社株買いの合計を見る

    配当だけでなく、自社株買い(会社が自分の株を買って株主に報いる方法)も含めた「総還元」で見ると、会社の姿勢がよくわかります。

  3. 3

    資源価格と金利のニュースをチェックする

    商社の利益は、資源価格と為替、金利で動きやすい性質があります。ニュースで動きを追う習慣が、冷静な判断につながります。

知っておきたいリスクと、注意点

バフェット氏が買っているから安心、とは言い切れません。投資には必ずリスクがあります。商社株について、あらかじめ知っておきたい点をまとめます。

  • ●資源価格の下落 石油や鉄鉱石の値下がりは、利益を直接押し下げます。実際に、2026年3月期には三菱商事と三井物産が減益でした
  • ●金利の上昇や景気の悪化 日本の10年国債の利回りは約3%まで上がりました。借入れの多い会社ほど、利息の負担が気になります
  • ●割安さの縮小 株価が上がった分、2020年ごろのような大きな割安さは小さくなっている可能性があります
  • ●バークシャーの方針の変化 現在は「何十年も持つ」と言っていますが、将来にわたって約束されたわけではありません
  • ●1つの業界への集中 5社は似た事業も多く、まとめて持つと値動きも似やすくなります。分散を意識することが大切です

まとめ 割安さの正体は、「見えにくさ」と「変わる力」でした

バフェット氏が見抜いたのは、商社が持つ「見えにくい価値」でした。数百もの事業で複雑に見え、資源価格で利益が上下し、日本株全体も低く見られていたために、実力より安く放置されていたのです。そこへ、低い金利で借りられる円のお金や、配当と自社株買いを増やす流れが重なりました。

そして2026年のいま、割安さは2020年ごろより小さくなったかもしれません。それでも、バークシャーが「何十年も持つ」と宣言し、5社が株主への還元を続けていることは、商社が変わろうとしている証拠でもあります。

この記事のまとめ
  • ●割安さの正体は、事業の複雑さ、資源価格の波、日本株全体の低評価の3つでした
  • ●バフェット氏が評価したのは、稼ぐ力と株主還元、円の低い金利、長く付き合える関係です
  • ●いまは割安さが小さくなっている可能性があるので、PER、PBR、ROEをセットで確認しましょう
  • ●資源価格や金利などのリスクも理解したうえで、無理のない金額で、分散を意識して考えましょう

投資の世界では、「誰が買っているか」より「なぜ買っているのか」を理解することが大切だとよく言われます。この記事をきっかけに、ぜひご自分でも5社のホームページや決算資料をのぞいてみてください。新しい発見が、きっとあるはずです。

参考にした情報

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