資産運用 最新情報 2026年版
資金シフトの本当のところを初心者向けに解説
2024年以降、日本銀行は段階的に政策金利を引き上げており、銀行の預金金利がじわじわと上昇しています。「普通預金の金利が上がってきた」「定期預金が少し気になってきた」と感じている方も多いのではないでしょうか。今回は、日銀の利上げが私たちの預金にどんな影響をもたらしているのか、また、本当に預金へ資金をシフトすべきなのかを、わかりやすくひも解いていきます。
現在の政策金利
1.00%
2026年6月・約31年ぶり水準
メガバンク普通預金金利
0.40%
2026年8月〜(2024年3月比400倍)
ネット銀行最高水準
1.00%
条件なしで年1%も登場(2026年7月〜)
「銀行に預けても利息なんてゼロに等しい」という時代が、終わりつつあります。
日本では長らく「超低金利」の時代が続いていました。普通預金に100万円を1年間預けても、利息はわずか10円(金利0.001%)という、まるで利息がないも同然の状態でした。ところが2024年以降、日本銀行(日銀)が金融政策を大きく転換させたことで、状況はみるみる変わってきています。
2026年6月、日銀は政策金利をおよそ1.00%へ引き上げることを決定しました。これは約31年ぶりの高い水準です。その影響で、メガバンク3行(三菱UFJ・三井住友・みずほ)は2026年8月から普通預金金利を0.40%へ引き上げることを発表しました。一方ネット銀行では年0.7%〜1.00%という、かつてでは考えられなかったような金利が登場し始めています。
こうなると気になるのが「預金に資金をシフトするべきなのか?」という疑問です。株や投資信託からお金を引き上げて、安全な預金に移した方が得なのでしょうか。あるいは、引き続き投資を続けた方が有利なのでしょうか。
この記事では、日銀の利上げの背景からおさらいしながら、預金金利が今どこまで上がっているのか、そして資金シフトをめぐる判断のポイントを、数字と事実に基づいてやさしく解説します。
そもそも「日銀の利上げ」とは何か
まず基礎から確認しておきましょう。日本銀行とは、日本の「中央銀行」です。日本全体のお金の流れを調整する役割を担っており、その最も重要な手段が「政策金利」の操作です。
政策金利とは、銀行同士がお金を貸し借りするときの金利のことです。この金利が上がると、銀行は資金調達コストが増えるため、私たちが銀行からお金を借りるときの金利(住宅ローンや企業向けローンなど)も上昇します。反対に、私たちが銀行にお金を預けるときの「預金金利」も上昇していきます。
つまり利上げとは、経済全体の「お金のコスト」を引き上げる政策なのです。物価上昇(インフレ)が続いているときに利上げを行うことで、消費や借入れを抑制し、物価の過熱を落ち着かせる効果があります。
日銀はなぜ利上げを続けているのか
日銀が利上げに踏み切った最大の理由は、「賃金と物価が一緒に上がる好循環」が生まれてきたからです。2024年以降、日本の企業は積極的に賃上げを実施しており、2025年の賃上げ率はバブル期に並ぶ5%台に達しました。企業の収益も好調で、日銀は「利上げしても経済に大きな問題は生じない」と判断しました。
もう一つの要因は、円安による輸入物価の上昇です。円の価値が下がると輸入品が高くなり、食料品や日用品の値上がりが続きます。日銀は利上げによって日米の金利差を縮小させ、過度な円安に歯止めをかけようとする狙いもあります。
日銀・政策金利の引き上げ経緯
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1
2024年3月
マイナス金利政策を解除。政策金利を-0.1%から0〜0.1%程度に引き上げ。普通預金金利は一気に20倍(0.001% → 0.020%)へ。
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2
2024年7月
政策金利を0.25%程度に追加利上げ。普通預金金利は0.10%に上昇(100倍の水準へ)。
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3
2025年1月
政策金利を0.50%程度に引き上げ。2008年以来、約17年ぶりの高水準に。
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4
2025年12月
政策金利を0.75%程度に引き上げ。1995年以来、30年ぶりの高水準。メガバンクは普通預金金利を0.20% → 0.30%へ引き上げ(2026年2月〜)。
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5
2026年6月
政策金利を1.00%程度に引き上げ。約31年ぶりの高水準。メガバンクは普通預金金利を0.30% → 0.40%へ引き上げ(8月〜)。ネット銀行では年1.00%台も登場。
わずか2年強で、日本の政策金利は事実上ゼロから1%に達しました。この変化のスピードは、長い目で見れば「急速」と言えるものです。
預金金利は今どこまで上がっているのか
利上げによって預金金利が上昇していることは確かです。ただし、「どの銀行に預けるか」によって受け取れる金利に大きな差が生まれているのが、今の時代の特徴です。
メガバンクとネット銀行の違いは大きい
2026年6月の利上げ(政策金利1.00%)を受けて、三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクは2026年8月から普通預金金利を0.40%に引き上げると発表しました。三菱UFJにとっては33年以上ぶり、旧行時代の1992年以来の高水準です。
一方でネット銀行はさらに積極的です。あおぞら銀行BANKは2026年7月1日から普通預金金利を年1.00%(上限100万円、条件なし)に設定。Habittoも条件なしで年0.70%という高金利を打ち出しています。
2024年3月のマイナス金利解除前(0.001%)と比べると、約2年半でメガバンクは400倍、ネット銀行では1000倍もの金利になった計算です。もちろん、出発点がゼロ同然だったことを忘れてはいけませんが、数字のインパクトは相当なものです。
| 銀行の種類 | 2024年3月以前 | 2026年8月〜 | 変化 |
|---|---|---|---|
| メガバンク(3行) | 0.001% | 0.40% | 約400倍 |
| ネット銀行(一例) | 0.001〜0.10% | 0.70〜1.00% | 大幅上昇 |
| 定期預金(1年) | 0.002〜0.01% | 0.40〜0.70%程度 | 大幅上昇 |
※上記は2026年7月時点の代表的な水準です。金融機関や条件によって異なります。
今後の金利はどこまで上がるのか
野村證券のメインシナリオでは、日銀は2026年6月・12月、2027年6月にそれぞれ0.25%ずつ利上げし、政策金利の最終到達点(ターミナルレート)は1.50%程度になると予測しています。オリックス銀行など各社の見通しでも、1.25〜1.50%が主流の見方です。
一方、みずほ総合研究所は2027年度末時点で長期金利(10年国債利回り)が2.9%まで上昇すると試算しています。長期金利は定期預金の金利にも影響するため、中長期の定期預金の金利も今後さらに上昇する可能性があります。
ただし、三井住友DSアセットマネジメントが指摘するように、政策金利が2.0%に達するには約3年間、年2回ペースの利上げを積み重ねる必要があり、決して平坦な道のりではありません。景気の動向や政治的な要因によって、利上げペースが鈍化するシナリオも十分ありえます。
預金への資金シフトは本当に起きているのか
さて、金利が上がってきたことで「預金に資金を移す動き(資金シフト)」は実際に起きているのでしょうか。ここが、今回の記事の核心部分です。
データが示す現実:シフトは「限定的」
みずほ総合研究所が2026年5月に発表したレポートによると、足元では家計金融資産が年間約25兆円のペースで増加しており、うち約10兆円をリスク資産(株式・投資信託)が占めています。一方、現金・普通預金の増加ペースは鈍化しており、2025年の増加幅は年間5.3兆円と、2010年代の平均(年18.4兆円)の3分の1以下にとどまっています。
さらに、同レポートは2030年にかけての見通しも示しており、今後の家計金融資産増加分(約354兆円増)の大半は株式・投資信託(約336兆円増)が占め、定期預金も増えるものの、現金・普通預金は逆に約32兆円減少する見込みとしています。
つまり「金利が上がったから預金に戻る」という大規模な資金シフトは、今のところ数字の上では確認されていないのです。
なぜ「大移動」は起きていないのか
- 預金金利はまだ低い:普通預金0.40%、定期預金でも0.70%程度の水準は、株式や投資信託の期待リターン(年5〜7%程度)と比べると、まだ大きく見劣りする水準です。
- 新NISAの普及:2024年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)により、若い世代を中心に投資を始める人が急増しています。月々の積立投資が習慣化した人にとって、预金への乗り換えは「投資の中断」を意味するため、心理的ハードルが高い面があります。
- インフレを考慮すると実質金利はまだマイナス:日銀自身が認めているように、政策金利が1.00%に達した今も「実質金利(金利からインフレ率を引いた本当のリターン)は大幅なマイナスが続いている」状況です。消費者物価が2%台で推移しているなか、預金金利0.40%は実質的にお金の価値が目減りすることを意味します。
- 定期預金への一部シフトは進んでいる:普通預金から定期預金へ、より金利の高い運用先を求める動きは一部で起きています。みずほ総合研究所の試算では、2030年にかけて定期預金が約67兆円増加すると予測されており、「完全に預金離れ」ではなく「預金内での動き替え」という変化が起きているようです。
家計全体で見た「お金の流れ」
興味深いのは、日本の家計全体の状況です。みずほ総合研究所のレポートによると、日本の家計は金融資産として約2,350兆円を保有する一方、負債は約400兆円にとどまります。つまり、日本の家計は圧倒的に「お金を持っている側」であり、金利上昇の恩恵を受けやすい構造なのです。
2025年度から2028年度にかけて政策金利が0.6%から1.5%程度まで上昇した場合、家計の預金等の利子収入は合計で約5.8兆円増える一方、住宅ローンの利払い増加は約2.4兆円にとどまり、差し引き約3.4兆円のプラスになるという試算があります。これに株式・投資信託からの配当収入増(約2.9兆円)を加えると、合計で約6.3兆円の「お金の恩恵」が家計に広がると見られています。
もちろん、住宅ローンを抱える世帯にとっては話が変わります。変動金利型の住宅ローンは政策金利の上昇に連動して金利が上がるため、返済額が増えるリスクを負います。家計の状況によって、利上げの恩恵と負担は異なるのです。
では、私たちはどう動くべきか
ここまでのポイントを踏まえると、「預金に全額移す」でも「投資を続けるだけ」でもなく、自分のライフステージとリスク許容度に合わせて「ポートフォリオを見直す」という考え方が重要になります。
「預金」の役割を再定義しよう
金利がゼロに近かった時代、預金は「とりあえず置いておく場所」に過ぎませんでした。しかし今や、ネット銀行の普通預金で年0.70〜1.00%の利息を受け取れる時代です。
これは「短期の生活防衛資金」として預金を活用する意味が大きく増した、ということです。半年〜1年分の生活費を高金利の預金口座に置いておくだけで、以前は考えられなかった利息収入が得られます。
具体的な考え方:3つの「お金の役割」で仕分けする
-
1
すぐ使うお金(生活費・緊急費)→ 高金利の普通預金へ
半年〜1年分の生活費は「いつでも引き出せる」ことが最優先。ネット銀行の高金利普通預金(年0.70〜1.00%)に置くだけで、以前よりも確実に効率が上がります。メガバンクのみ使っている方は、この機にネット銀行口座の開設を検討する価値があります。 -
2
3〜5年後に使う予定のお金 → 定期預金や個人向け国債も検討
住宅購入の頭金や子どもの教育資金など、「使う時期がある程度決まっているお金」は、値動きリスクを避けながら少しでも利息を得たい資金です。定期預金(1年もの)や個人向け国債(変動10年)は選択肢になり得ます。2026年1月に発行された10年物国債は表面利率が2.1%に達し、1998年以来28年ぶりの高水準となりました。 -
3
10年以上使わないお金 → 引き続き長期・積立・分散投資
老後資金など長期で運用できるお金は、インフレに打ち勝つためにも株式を含む投資が有効です。新NISAやiDeCoを活用した積立投資は、金利が上昇した今でも基本的な有効性は変わりません。ただし、日本債券を多く含む投資信託は、金利上昇局面で基準価額が下がりやすい点には注意が必要です。
注意:「金利が上がったから預金へ全部移す」は危険
預金金利が上がったとはいえ、インフレ率(2%台)を下回る水準では、実質的な資産価値は目減りし続けます。老後に向けた長期資産は「インフレに勝つ力」が必要であり、預金だけに集中させると「安全に見えて実は損している」という状況に陥るリスクがあります。また、利上げを意識して急いで株式・投資信託を売却することも、長期的に見れば機会損失につながる可能性があります。焦らず、自分の資産全体のバランスを見直すことが大切です。
「今の銀行」を見直すタイミングが来ている
実は今回の利上げで生まれた最もわかりやすい「行動機会」のひとつが、銀行口座の見直しです。メガバンクの普通預金金利が0.40%に対し、ネット銀行では1.00%という状況は、長年同じ銀行を使い続けている人にとって「乗り換えを検討する価値あり」のサインです。
100万円を1年間預けた場合、メガバンク(0.40%)では税引後でおよそ3,184円の利息ですが、ネット銀行(1.00%)では税引後でおよそ7,960円になります。4,000円以上の差は、一つのサービスや食事代に相当します。「たかが数千円」と思うかもしれませんが、これは元本に対するリスクゼロの話であり、考え方によっては侮れない差です。
投資初心者が今おさえておくべき3つのこと
ここまでをまとめると、「利上げ=預金最強」という単純な話ではなく、お金の役割に応じて使い分けることが重要だとわかります。最後に、資産運用初心者の方がこの局面でおさえておきたいポイントを整理します。
初心者が今おさえておきたい3つのポイント
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「生活防衛資金」だけは高金利の普通預金に移す価値あり
半年〜1年分の生活費は安全かつ流動性の高い預金で保管するのが鉄則です。ネット銀行の普通預金金利が年0.70〜1.00%まで上昇した今、「とりあえずメガバンク」から「金利の高いネット銀行」に移すだけで、リスクゼロで手取りが増えます。 -
長期の投資は「続ける」のが原則。今の金利水準で慌てない
新NISAやiDeCoで積立投資を続けている方は、利上げを理由に途中でやめる必要はありません。長期・積立・分散という王道の考え方は、金利が上がっても変わりません。ただし、日本国内の債券型ファンドは金利上昇で価格が下がる可能性があるため、保有商品の性格は確認しておきましょう。 -
今後の利上げは「確実」ではない。情報を追いかけすぎない
野村證券や大和総研などの予測では今後も利上げが続くとしていますが、景気の悪化や政治的な要因で利上げが止まるシナリオも十分あります。毎回の日銀発表に一喜一憂して資産を動かすのは得策ではありません。大きな方向性だけ把握しながら、長期の視点を持つことが大切です。
この記事のまとめ
- 日銀は2026年6月に政策金利を1.00%へ引き上げ(約31年ぶり)。メガバンクの普通預金金利は8月から0.40%、ネット銀行は最大1.00%に達する銀行も。
- 金利上昇が始まっても、大規模な「預金への全面シフト」はデータ上確認されていない。株式・投資信託への流入は続いており、2030年にかけても増加見通し。
- インフレ率(2%台)に対し、預金金利(0.40〜1.00%)はまだ「実質マイナス」の水準。預金だけに集中させると、じわじわと資産の実質的な価値が目減りするリスクがある。
- 賢い対応は「お金の役割で仕分け」。すぐ使う生活費はネット銀行の高金利預金へ、数年後に使う予定のお金は定期預金・国債で、10年以上使わないお金は長期投資を継続。
- 今回の利上げ局面で最もシンプルかつリスクゼロで取れるアクションは「銀行口座の見直し」。メガバンク一択だった人は、ネット銀行への乗り換えを検討する価値あり。
「金利のある世界」が戻ってきたのは、本当に久しぶりのことです。これは、長年「ゼロ金利で損をしてきた預金者」にとってはうれしい変化であり、資産運用に向き合う良いきっかけでもあります。
ただし、日銀の利上げがあったからといって「すべてを預金に戻せばよい」というほど単純ではありません。インフレが続くなかでは、預金だけでは実質的な資産価値を守りきれない可能性があります。「安全に置いておくお金」と「長期で育てるお金」を分けて管理する視点が、これからの時代の資産管理の基本になっていくでしょう。
日々の金利動向に一喜一憂するのではなく、自分のライフプランに合わせた「お金の使い道の地図」を描くこと。それが、この「金利のある世界」を上手に生き抜くための第一歩です。まずは自分の銀行口座の金利を確認することから始めてみましょう。
※本記事は2026年7月時点の公開情報をもとに執筆しています。金利水準や政策内容は今後変更される場合があります。最終的な投資・資産運用の判断はご自身の責任で行ってください。特定の金融商品や金融機関をすすめるものではありません。
【免責事項】
記事内のデータ・数値は2026年7月時点の情報をもとにしています。
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