日本円にしておよそ23兆円。これが、2026年春に公表された書類に載っていたテスラのイーロン・マスク氏の2025年度の報酬額です。ところが同じ書類には、彼が実際に受け取った金額はゼロだったとも書かれていました。
この一見矛盾した数字の正体がわかると、米国株のニュースの見え方が大きく変わります。役員報酬ランキングは、単なるお金持ちの話ではなく、その会社が何を目指し、株主とどう向き合っているかが凝縮された「経営の設計図」なのです。今回はその読み解き方を、順位表と一緒にじっくり見ていきます。
米国株に興味を持つと、必ずどこかで目にするのが役員報酬のランキングです。数百億円、ときには数千億円という金額が並び、そのスケールに驚かされます。ただ、ここで「経営者が儲けすぎている」という感想だけで通り過ぎてしまうと、非常にもったいないことになります。
というのも、米国の役員報酬は、日本の給与とはまったく別の仕組みで組み立てられているからです。ランキング上位の金額の多くは、現金でもらった給料ではありません。「この目標を達成できたら渡します」という約束の株式を、金額に換算したものです。つまりランキング表は、その会社の経営陣が今後何年かで何を達成しようとしているかを、金額という形で表した目標一覧に近いものなのです。
この記事では、2026年に出そろった最新の開示資料をもとに、上位100人の顔ぶれと構造を整理していきます。読み終わるころには、決算ニュースの片隅に載る報酬の数字から、その会社の本気度や株主との緊張感まで読み取れるようになっているはずです。
まず全体像です。米国のガバナンス調査会社ボードルームアルファが2026年5月にまとめた集計によると、2025年度に2500万ドル(約38億円)以上の報酬を受け取った米国上場企業のCEOは207人でした。前年は153人でしたから、1年で54人も増えたことになります。中央値は3330万ドル(約50億円)で、5000万ドルを超えたのが54人、1億ドルを超えたのが12人です。
207人
2500万ドル以上を受け取ったCEOの人数(前年153人)
+23.2%
大手企業CEO報酬の中央値の伸び。2021年以来もっとも大きい上昇です
341倍
CEO報酬が従業員の中央値の何倍かを示す比率。前年は300倍でした
報酬調査で長い実績を持つエクイラー社の集計では、大手企業CEOの報酬中央値は2025年度に2940万ドル(約44億円)まで上昇し、前年比プラス23.2%を記録しました。これは新型コロナ後の2021年に記録した30.8%の急上昇以来、もっとも大きな伸びです。伸びを牽引したのは株式報酬で、中央値は1570万ドルから2190万ドルへと38.8%増えています。基本給の伸びが5.3%にとどまったのと比べると、増え方の違いは一目瞭然です。
それでは実際の顔ぶれを見てみましょう。以下は各社が米国証券取引委員会に提出した書類の「報酬要約表」の合計額をもとにした順位です。右端には、その報酬案に対する株主投票の賛成率も並べてあります。ここが実はいちばんの読みどころになります。
| 順位 | CEO | 企業(ティッカー) | 報酬総額 | 1年株価 | 賛成率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | シャンク・ミトラ | ウェルタワー(WELL) | 8億2110万ドル | +40% | 19% |
| 2 | カズ・ネジャティアン | オープンドア(OPEN) | 7億4110万ドル | +638% | 97% |
| 3 | R・スキャリンジ | リビアン(RIVN) | 4億260万ドル | -1% | 92% |
| 4 | ニラジ・シャー | ウェイフェア(W) | 2億8080万ドル | +77% | 80% |
| 5 | マキ・ザンガネ | サミット・セラピューティクス(SMMT) | 2億4600万ドル | -32% | 97% |
| 6 | ホック・タン | ブロードコム(AVGO) | 2億530万ドル | +82% | 66% |
| 7 | ピーター・ガスナー | ビーバ・システムズ(VEEV) | 1億7240万ドル | -31% | 91% |
| 8 | デビッド・ザスラフ | ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD) | 1億6500万ドル | +183% | 40% |
| 9 | ビプル・シンハ | ルーブリック(RBRK) | 1億4000万ドル | -26% | — |
| 10 | S・シュワルツマン | ブラックストーン(BX) | 1億2560万ドル | -14% | — |
| 11 | デビッド・ソロモン | ゴールドマン・サックス(GS) | 1億1810万ドル | -3% | 71% |
| 12 | S・ラマスワミ | スノーフレイク(SNOW) | 1億130万ドル | +16% | 30% |
| 13 | ニケシュ・アローラ | パロアルトネットワークス(PANW) | 9970万ドル | +38% | 47% |
| 14 | サティア・ナデラ | マイクロソフト(MSFT) | 9650万ドル | -7% | 92% |
| 15 | ジェーン・フレイザー | シティグループ(C) | 9580万ドル | +69% | 60% |
| 16 | チャールズ・シャーフ | ウェルズ・ファーゴ(WFC) | 9450万ドル | +8% | 66% |
| 17 | リップブー・タン | インテル(INTC) | 9300万ドル | +488% | 87% |
| 18 | N・デ・マシ | アイオンキュー(IONQ) | 8960万ドル | +46% | 64% |
| 19 | ジョセフ・ベイ | KKR(KKR) | 8430万ドル | -18% | — |
| 20 | ロビン・ビンス | BNY(BNY) | 8350万ドル | +9% | 94% |
この表を見て、少し意外に感じた方も多いのではないでしょうか。上位に並んでいるのは、アップルやエヌビディアのような超巨大企業ではありません。1位のウェルタワーは高齢者向け住宅などの不動産に投資する会社で、従業員は数百人規模です。2位のオープンドアは住宅をオンラインで売買する会社、3位のリビアンは電気自動車の新興メーカーです。
なぜこうなるのか。答えは「一時的な大型付与」という仕組みにあります。
10年間かけて達成する目標に対して、株式をまとめて一度だけ渡す約束をすることがあります。米国のルールでは、この約束をした年に金額の全額を計上しなければなりません。10年分の報酬が、1年分の数字として表に載ってしまうのです。
2025年度は、こうした一時的な大型付与が14件もありました。1位のウェルタワーは10年間の役員継続プログラムを導入し、現金報酬をほぼすべて株式に置き換えました。ですから8億ドルという数字は、今年払われた金額ではなく、これから10年の約束の総額なのです。
それが極端に表れているのが4位のウェイフェアです。ニラジ・シャー氏の前年度の報酬総額は28万3000ドル(約4200万円)でした。それが翌年、2億8080万ドルに跳ね上がっています。伸び率にすると99088%という、もはや意味をなさない数字になります。基本給はわずか8万ドルで、残りはすべて業績連動の株式です。株価が大きく上がらなければ、1株も手に入らない設計になっています。
では、私たちがよく知る企業のトップはどのあたりにいるのでしょうか。同じ207人の順位で確認すると、こうなります。
| 順位 | CEO | 企業(ティッカー) | 報酬総額 |
|---|---|---|---|
| 27 | ティム・クック | アップル(AAPL) | 7430万ドル |
| 45 | リサ・スー | AMD(AMD) | 5520万ドル |
| 55 | ジェンスン・ファン | エヌビディア(NVDA) | 4990万ドル |
| 62 | ボブ・アイガー | ウォルト・ディズニー(DIS) | 4580万ドル |
| 68 | ジェイミー・ダイモン | JPモルガン・チェース(JPM) | 4060万ドル |
| 73 | アービンド・クリシュナ | IBM(IBM) | 3800万ドル |
| 74 | ラリー・フィンク | ブラックロック(BLK) | 3770万ドル |
| 135 | メアリー・バーラ | ゼネラルモーターズ(GM) | 2990万ドル |
| 163 | ジム・ファーリー | フォード(F) | 2750万ドル |
| 167 | ダグ・マクミロン | ウォルマート(WMT) | 2740万ドル |
世界最大の小売企業ウォルマートのトップが167位、時価総額で世界の頂点を争うエヌビディアのファン氏が55位です。報酬ランキングの上位は、会社の大きさの順位ではありません。「今年たまたま大きな約束をした会社」の順位なのです。ここを取り違えると、ランキングから読み取れる情報がまるで変わってしまいます。
ちなみに女性CEOの状況も記録が動きました。シティグループのジェーン・フレイザー氏の9580万ドルは、この調査の歴史上、女性CEOとして最高額です。これまでの記録はAMDのリサ・スー氏が2019年に受け取った5850万ドルでした。とはいえ、上位100人の中に女性は5人しかおらず、層の薄さは変わっていません。
ここが、初心者がもっとも混乱しやすいところです。同じ人物の同じ年の報酬について、報道によって金額がまったく違うことがあります。嘘をついているわけではなく、3種類の測り方が並存しているのです。
| 呼び方 | 何を表す金額か | 投資家としての使い道 |
|---|---|---|
| 付与時の価値 報酬要約表の合計額 |
株式を渡すと約束した日の時点で、その株式に理論上いくらの価値があったか。ランキングで使われるのはほぼこの数字です | 取締役会が「どれだけ大きな賭けに出たか」を測る目安になります |
| 実際に支払われた報酬 CAP |
株価の変動を反映して計算し直した金額。米国では開示が義務づけられています | 報酬と株主の利益が本当に連動しているかを確かめられます |
| 実現額 受け取った実額 |
条件を満たして株式が本人のものになり、実際に手にした金額 | 目標が達成されたのかどうかが、いちばん正直に表れます |
冒頭のマスク氏の例に戻りましょう。テスラが2026年4月末に提出した書類には、2025年度の報酬総額として1580億ドルが記載されました。うち約1320億ドルは、2025年に株主が承認した新しい報酬制度について、すべての目標を達成した場合の最大額を付与時の価値として計上したものです。残る約260億ドルは、その前に暫定的に設定された別の付与分ですが、こちらは2026年4月に本人が権利を放棄しています。
そしてテスラ自身が書類の中で、報告する報酬額と実際に得られる価値には大きな乖離が生じる可能性があると注意書きを添えました。2025年度は時価総額や事業の目標がひとつも達成されなかったため、実現額はゼロです。1580億ドルという数字と、受け取り額ゼロという事実は、どちらも正しいのです。
2025年11月の株主総会で、約75%の賛成を得て承認された制度です。すべて達成すれば最大1兆ドル規模になりますが、その条件は次のようなものです。
- ▶調整後利益を段階的に引き上げ、最終段階では年間4000億ドルに到達すること
- ▶車両の累計販売台数2000万台(提出時点の実績は800万台超)
- ▶自動運転支援機能の有料契約1000万件
- ▶人型ロボット100万台の納入、および無人タクシー100万台の商用運行
これを見ると、報酬制度が単なる待遇ではなく、経営計画そのものを数値化した契約書だということがよくわかります。投資家の立場からすれば、この目標一覧は「会社が公式に約束した未来像」です。四半期決算のたびに、この目標にどれだけ近づいたかを追いかければ、経営の進捗を客観的に測る物差しになります。
報酬の内訳を見ると、その傾向がさらにはっきりします。ウェルタワーのミトラ氏の場合、8億2110万ドルのうち基本給が占める割合は0.2%にすぎません。ブロードコムのホック・タン氏も0.6%です。ウェイフェアのシャー氏は基本給8万ドルで、日本の会社員と大きく変わらない水準です。
大手企業全体でも、報酬中央値のうち株式報酬が7割を超えるのが当たり前になっています。米国のCEOは「給料をもらう人」ではなく、「自社株という成果報酬で生活する人」に変わったと言い換えてもよいでしょう。株価が下がれば自分の資産も同じだけ減ります。だからこそ、株主と利害が一致しやすいと考えられているのです。
もう一点、2025年度の集計で目を引いた変化があります。役員の福利厚生費の中央値が24.2%も増え、31万5688ドルから39万1991ドルになりました。背景にあるのは警備費用です。米国の大手企業のうち約38%が、2025年度に役員向けの警備関連の支出を開示しており、前年から13%ほど増えています。経営者を取り巻く環境の変化までが、報酬の数字に表れているわけです。
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。米国では株主総会で役員報酬について賛否を問う投票が行われます。法的な拘束力はありませんが、賛成率が70%を割ると経営陣への明確な警告、50%を割ると事実上の否決と受け取られます。2025年度の207人のうち、27人が70%を下回り、8人は50%さえ得られませんでした。
| 賛成率 | 企業 | CEO | 報酬総額 | 1年株価 |
|---|---|---|---|---|
| 19% | ウェルタワー | シャンク・ミトラ | 8億2110万ドル | +40% |
| 25% | アイキュービア | アリ・ブースビブ | 2810万ドル | +29% |
| 30% | スノーフレイク | S・ラマスワミ | 1億130万ドル | +16% |
| 32% | サーモフィッシャー | マーク・キャスパー | 7990万ドル | +21% |
| 40% | ワーナー・ブラザース・ディスカバリー | デビッド・ザスラフ | 1億6500万ドル | +183% |
| 41% | エレメント・ソリューションズ | B・グリクリック | 2650万ドル | +92% |
| 47% | パロアルトネットワークス | ニケシュ・アローラ | 9970万ドル | +38% |
| 51% | アドビ | S・ナラヤン | 5120万ドル | -42% |
この表には驚くべき共通点があります。否決された8件のうち7件は、株価が上がっていた会社なのです。ウェルタワーは株価が40%上昇し、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは183%も上がっていました。それでも株主は報酬案を拒みました。
逆の例もあります。コムキャストは株価が20%下落しましたが、報酬案には90%の賛成が集まりました。1兆ドル規模というマスク氏の報酬案は、議決権助言会社2社が反対を推奨したにもかかわらず、約75%の賛成で承認されています。
ここから浮かび上がる結論は明快です。株主が拒むのは、金額の大きさでも株価の悪さでもなく「不意打ち」なのです。これまで報酬が数千万ドル規模だった会社が、突然8億ドルの制度を導入すれば反発を招きます。一方、テスラの制度は数か月にわたって公開の場で議論され、達成条件も明示されていました。金額の絶対値ではなく、説明のプロセスと投資家の予想との距離が評価されているのです。
もうひとつ、投資家として気にしておきたい指標があります。一時的な大型付与を除いた通常の報酬でも、株価が下落した年に2500万ドル以上を受け取ったCEOが68人いました。うち30人は3年間でも株価がマイナスです。
興味深いのは、この層と取締役会の質に相関が見られる点です。調査会社の採点で取締役会の評価がC以下だった企業の割合は、この危険地帯では47%に達しました。全体では29%ですから、明らかに偏りがあります。報酬が業績とかみ合っていない会社は、取締役会が経営陣に対して十分な緊張感を持っていない可能性が高いと読み取れるわけです。
報酬の設計は、ガバナンスの体温計のようなものです。個別株を長く持つつもりなら、株価チャートと同じくらい、この温度を確認する価値があります。
1位のウェルタワーは高齢者向け住宅などを扱う不動産投資信託です。2025年に株価が40%上昇し、業績は好調でした。ところが2025年10月に発表した10年間の役員報酬プログラムは、現金と株式による報酬のほぼ全額を長期の株式に置き換える大胆な内容でした。ミトラ氏の8億2110万ドルのうち、99%以上が長期の株式報酬です。半分は2031年まで在任しなければ権利が確定せず、残りは今後5年で企業価値が45%以上増え、主要指数を上回ることが条件になっています。
設計自体は長期志向で、株主との利害一致を強く意識したものです。それでも2026年5月の投票で賛成はわずか19%でした。安定した配当を求めて不動産投資信託を買っていた株主層には、この規模の株式付与があまりに想定外だったのです。制度の良し悪しと、株主に受け入れられるかどうかは別問題だという教訓がここにあります。
スターバックスのブライアン・ニコル氏の報酬は、9580万ドルから3100万ドルへと68%減りました。数字だけ見れば大幅な降格のようですが、実態は違います。前年度の金額には、就任時に一度だけ渡された入社時株式が含まれていました。それが翌年なくなったので、見かけ上の数字が急減したのです。株価はこの間19%上昇しています。
報酬の増減率をそのまま業績の評価と受け取ってしまうと、判断を誤ります。前年比が数百パーセント動いていたら、まず「一度きりの付与があったのではないか」と疑うのが正しい読み方です。
6位のブロードコムでは、ホック・タン氏の株式報酬がAI関連製品の意欲的な売上目標に強く結びついています。同じように、報酬の条件にAI関連の目標を組み込んだ企業が2025年度は目立ちました。エレクトロニック・アーツ、ダナハー、ハロザイム・セラピューティクスなどが例です。
ここは投資アイデアの宝庫です。報酬制度に「AI製品の売上をいくらまで伸ばす」と書いてあれば、それは経営陣が自分の資産を賭けて公言した目標ということになります。プレスリリースの前向きな言葉より、はるかに信頼度の高い情報です。ちなみに賛成率は66%で、株主の一部は金額の大きさに首をかしげたようです。
アドビのシャンタヌ・ナラヤン氏の報酬は5120万ドルで、前年からほぼ横ばいでした。しかし株価は42%下落し、3年でもマイナス17%です。賛成率は50.7%とかろうじて過半数を超えた程度で、取締役会の評価もC評価にとどまりました。報酬額を据え置いただけでは、業績が伴わないときの株主の不満は収まらないことを示す例です。
ここまでの内容は、実は誰でも無料で確認できます。米国の上場企業は報酬の詳細を株主総会の招集資料に載せる義務があり、その資料は米国証券取引委員会の公開データベースで誰でも読めます。企業のIRページから「Proxy Statement」または「DEF 14A」を探すのがいちばん簡単です。翻訳機能を使えば、英語が苦手でも十分に読み進められます。
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1
報酬要約表で3年分を並べて見る
直近3年分が並んでいます。金額が1年だけ跳ねていれば、それは一時的な大型付与のサインです。平常時の水準を先に把握しましょう。
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2
基本給の比率を計算する
総額のうち基本給が何%かを見ます。1桁%なら、経営陣の収入は株価次第という設計です。逆に現金の比率が高い会社は、株価が伸びなくても報酬が守られる構造だと言えます。
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3
業績条件の中身を読む
株式が確定する条件が具体的な数値になっているかを確認します。売上、利益、株主総利回りなど、検証できる指標が並んでいれば信頼度は高まります。曖昧な表現ばかりなら注意が必要です。
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4
株主投票の結果を調べる
総会後に提出される8-Kという書類に投票結果が載ります。賛成率が70%を下回っていたら、他の投資家が何を問題視したのかを調べる価値があります。
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5
CEOと従業員の報酬比率を見る
米国企業はこの比率の開示も義務づけられています。大手企業の中央値は341倍でした。同業他社と比べて極端に高い場合は、その理由を確かめておきたいところです。
個別株を持っていなくても、この話は無関係ではありません。米国株のインデックスファンドを買っているなら、あなたはこれらの企業の株主です。運用会社は保有する株式の議決権を行使しており、報酬案への賛否も投じています。
多くの運用会社は議決権行使の方針と結果を公開しています。自分が積み立てているファンドの運用会社が、どういう基準で報酬案に賛成や反対をしているのかを一度のぞいてみると、その会社の姿勢が見えてきます。コストや過去の成績だけでは測れない、運用会社の考え方を知る手がかりになります。
米国の役員報酬ランキングは、金額の派手さばかりが話題になりがちです。けれども中身を分解していくと、そこにあるのは経営陣が自分の資産を担保にして掲げた目標一覧であり、取締役会と株主の緊張関係の記録でした。
2025年度は、その傾向がとくに強く出た年でした。一時的な大型付与が14件も重なり、上位の顔ぶれは規模の大きさではなく「大胆な約束をした会社」の並びになりました。同時に、27件もの報酬案が株主から厳しい評価を受け、そのほとんどが株価上昇中の企業でした。米国の投資家が見ているのは金額ではなく、その決め方と説明の丁寧さなのです。
この視点を持てば、ニュースの読み方が変わります。ある企業が巨額の報酬制度を発表したというヘッドラインを見たとき、まず確かめるべきは金額ではありません。どんな条件がついているのか、株主はそれをどう評価したのか。そこにこそ、その会社の実像が現れます。
- ▶2025年度に2500万ドル以上を得た米国CEOは207人で前年から54人増加。中央値は3330万ドルでした
- ▶上位はウェルタワー8億2110万ドル、オープンドア7億4110万ドル、リビアン4億260万ドルの順。いずれも一時的な大型株式付与です
- ▶テスラのマスク氏の1580億ドルは付与時の最大額であり、目標未達のため実際の受け取りはゼロでした
- ▶報酬には付与時の価値、実際に支払われた報酬、実現額という3つの測り方があり、混同すると誤読につながります
- ▶株主が否決した8件のうち7件は株価上昇中の企業。反発の原因は金額ではなく予想外の設計でした
- ▶報酬制度に書かれた業績条件は、経営陣が資産を賭けて公言した目標であり、投資判断の材料として使えます
役員報酬の資料は、決算短信よりずっと人間味のある読み物です。誰が何を約束し、株主がそれをどう受け止めたのかという物語がそこにあります。気になる銘柄を1社選んで、その報酬要約表をのぞいてみてください。数字の向こうに、その会社が本当に目指している未来が見えてきます。
データについて
本記事の順位と金額は、ボードルームアルファが2026年5月時点で集計した2025年度の報酬要約表の合計額、ならびにエクイラー社が2026年に公表した調査、および各社が米国証券取引委員会に提出した開示資料にもとづいています。集計機関によって対象企業や算定方法が異なるため、同じCEOでも金額や順位が一致しない場合があります。円換算は1ドル150円で計算した概算です。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任で行ってください。




【免責事項】
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