「いつも」(銘柄コード:7694)はEC支援の黒子役から成長株へ変われるか
売上高が5年で1.5倍に伸びた注目のグロース市場銘柄を、資産運用初心者にもわかりやすく解説します。
「株式投資に興味はあるけれど、どの会社を見ればいいのかわからない」。そんな方に向けて、今回はEC(ネット通販)事業を支援する会社「いつも」(証券コード7694、東証グロース市場)を取り上げます。私たちが普段何気なく利用しているAmazonや楽天市場の裏側で、ブランドやメーカーの売上を伸ばす仕事をしている会社です。名前は聞いたことがなくても、実はとても身近な存在に関わっている会社なのです。この記事では、決算資料や複数の情報源をもとに、会社の中身から株価指標、そして注意しておきたいリスクまで、初心者の方でも理解できるように順番に解説していきます。
資産運用を始めたばかりの頃は、どうしても知名度の高い大企業の株にばかり目が行きがちです。しかし、私たちの生活を陰で支えている「縁の下の力持ち」のような会社にこそ、成長のヒントが隠れていることがあります。今回取り上げるいつもは、まさにそうした存在です。自社で商品を作っているわけではないのに、多くのブランドやメーカーから頼りにされているという点に、この会社ならではの面白さがあります。読み進めるうちに、普段の買い物の見え方が少し変わるかもしれません。
いつもの事業を理解するうえで欠かせないのが、EC市場そのものの成長です。国内の物販系EC(インターネット通販)市場は、2025年時点でおよそ15.3兆円の規模になっているとされ、2026年には15.8兆円、2027年には16.2兆円へと着実に拡大していくと見込まれています。私たちがスマートフォンひとつで買い物を済ませる機会は年々増えており、この流れはこれからも続いていくと考えられます。
一方で、市場が伸びているからといって、すべての企業がその恩恵を受けられるわけではありません。ネット通販で商品を売るには、商品ページの作り込みや広告運用、価格設定、在庫管理、発送対応など、専門的なノウハウが数多く必要です。特に、これまで実店舗や卸売りを中心に商品を販売してきたメーカーにとって、自社だけでEC事業を立ち上げるのは簡単なことではありません。「市場は伸びているのに、自社では活かしきれない」という悩みを抱える企業は少なくないのです。ここに、いつものようなEC支援企業が活躍する余地が生まれます。
まず、いつもという会社が何をしているのかを整理しましょう。会社のミッションは「Eコマースで、日本の未来をリードする」というもので、簡単に言うとブランドやメーカーの代わりにネット通販事業を丸ごと引き受ける会社です。
たとえば、あるお菓子メーカーがAmazonや楽天市場で自社商品を売りたいと考えたとします。しかし、ネット通販は商品ページの作り方、広告の出し方、注文が入ったあとの発送作業まで、覚えることがとても多い世界です。そこで、いつもがそのメーカーに代わって、戦略の立案から商品ページ制作、広告運用、在庫管理、発送までを一括で引き受けます。つまり、「ネット通販の何でも屋さん」のような存在だとイメージすると理解しやすいでしょう。
事業は大きく4つに分かれています。ひとつめは各ECモールでの運営を支援する基本サービス、ふたつめは売上の約7割を占める主力事業で、ブランドと一緒に事業を育てていく協業型のサービス、みっつめは自社や提携先のブランドを直接消費者に販売する取り組み、よっつめはライブコマース(配信を見ながら買い物ができる仕組み)などの新しい販売チャネルを提供するサービスです。特に主力となっている協業型のサービスは、メーカーの売上が伸びるほど自社の収益も増える仕組みになっており、会社の成長とパートナー企業の成長が連動しやすいという特徴があります。
会社は2007年に設立され、20年近い実績を積み重ねてきました。契約している案件数は14,000件を超え、幅広い業種のブランドやメーカーと取引をしています。近年はシンガポールやマレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンといった東南アジア各国への展開も進めており、国内だけでなく海外のEC市場も見据えた成長戦略を描いています。
いつもの事業を語るうえでよく登場するのが「D2C」という言葉です。これはDirect to Consumerの略で、メーカーが卸売業者や小売店を介さずに、自社のオンラインショップなどを通じて消費者に直接商品を届けるビジネスモデルのことを指します。中間業者を挟まない分、メーカーはより高い利益を確保しやすくなり、顧客の声を直接聞きながら商品開発に活かせるという利点があります。いつもは、このD2Cへの転換を後押しする専門家集団としての役割も担っており、実店舗の売上が伸び悩む中で新しい販売チャネルを模索するメーカーにとって、心強いパートナーとなっています。
会社の魅力を語るうえで欠かせないのが業績です。2026年5月14日に発表された2026年3月期の決算では、売上高が約178億8千万円となり、前の期と比べて28.2パーセントの増収となりました。営業利益は約2億6900万円で、前の期から262.3パーセントの増益、経常利益は約2億4900万円で474.8パーセントの増益と、いずれも大きく伸びています。
| 決算期 | 売上高 | 前期比 |
|---|---|---|
| 2022年3月期 | 約116.5億円 | ― |
| 2023年3月期 | 約123.1億円 | 増収 |
| 2024年3月期 | 約138.6億円 | 増収 |
| 2025年3月期 | 約139.4億円 | ほぼ横ばい |
| 2026年3月期(実績) | 約178.7億円 | 28.2パーセント増 |
| 2027年3月期(会社予想) | 約205.6億円 | 15.0パーセント増 |
このように、直近5年で売上高がおよそ1.5倍以上に伸びていることがわかります。特に2026年3月期は大きく成長した年であり、会社としても「協業ブランドパートナーサービス」の好調が業績をけん引したと説明しています。さらに2027年3月期についても、売上高は205億6000万円、営業利益は3億2600万円と、引き続き二桁成長を見込んでいます。AIを活用した業務の効率化や、新しいブランドの獲得によって、利益率の向上を目指す方針を掲げている点も注目したいポイントです。
なお、次回の決算発表は2026年8月14日に予定されています。四半期ごとの進捗を確認することで、会社予想通りに成長が続いているかどうかをチェックすることができます。
決算資料を見ると、いつも単体では売上高が約162.8億円、営業利益が約5.4億円となっており、グループ全体(連結)の営業利益2.7億円よりも単体のほうが高い数値になっています。これは、子会社であるビーランやピースユーといった企業が先行投資の段階にあり、グループ全体の利益を一時的に押し下げていることを示しています。裏を返せば、本業であるEC支援事業そのものはしっかりと利益を生み出せる体質になっているということでもあり、子会社の投資が実を結び始めれば、グループ全体の利益がさらに伸びていく可能性を秘めているとも言えます。
また、キャッシュフロー(お金の出入り)を見ると、2026年3月期は在庫や売上債権の増加によって、営業活動によるキャッシュフローが一時的にマイナスとなりました。これは、事業が急拡大する局面でよく見られる現象で、売上が伸びるほど仕入れや立て替えの資金が先に必要になるためです。赤字とは意味が異なりますが、成長企業に投資する際には、こうした資金繰りの動きも合わせてチェックしておくと、より深く会社を理解できます。
売上の柱である「協業型ビジネスモデル」の強さ
いつもの収益の中心は、ブランドと一緒に事業を育てていく協業型のサービスで、全体の売上の約7割を占めています。このモデルの面白いところは、いつもが単なる下請け業者ではなく、パートナー企業の売上が伸びるほど自社の取り分も増える「成功報酬型」に近い性質を持っている点です。景気に左右されにくい安定収入と、成長に連動する上振れの両方を狙えるビジネス構造だと言えます。
国内にとどまらない海外展開
国内の物販EC市場は2025年時点で15.3兆円とされ、2026年には15.8兆円、2027年には16.2兆円まで拡大すると見込まれています。市場そのものが伸びているところに加えて、いつもはシンガポールやマレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンなど東南アジアへの展開も進めています。現地に旗艦店を開設したり、著名人との肖像契約を結んだりと、ブランド価値を高める取り組みも行っており、国内市場の伸びに海外展開という「もう一段のエンジン」が加わっている点は見逃せません。
黒字転換したばかりの成長フェーズにある
2026年3月期は増収増益に加えて、利益面でも大きく改善した年でした。会社としては、AIを活用した効率化や既存ブランドの成長加速、新規ブランドの獲得によって、今後も持続的な成長と利益率の向上を目指す方針を示しています。ただし、後ほど説明するように、まだ配当を出す段階には至っておらず、利益を事業拡大に再投資している「成長投資フェーズ」にある会社だという点は理解しておく必要があります。
続いて、株価に関する指標を見てみましょう。いつもは東証グロース市場に上場しており、株価は市場環境や決算発表のタイミングによって短期間でも大きく変動する傾向があります。以下は決算発表時点を基準とした代表的な指標です。実際の株価は日々変動しますので、投資を検討する際は必ず証券会社のサイトなどで最新の株価をご自身で確認してください。
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| 上場市場 | 東証グロース市場 |
| 業種 | 小売業(EC支援・D2C事業) |
| 2026年3月期 配当 | 無配(0円) |
| 2027年3月期 配当予想 | 無配継続の見込み |
| 従業員数 | 212名(2026年3月期時点) |
| 純資産 | 約25億円(2026年3月期時点) |
| 契約案件数 | 14,000件以上 |
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、時価総額といった数値は、株価の動きに応じて日々変わります。取材時点の複数の情報源では、PERはおおむね20倍から30倍台、PBRは1倍台から2倍台で推移しており、時価総額は数十億円規模の小型株であることが確認できました。小型のグロース株らしく、値動きの幅が大きくなりやすい銘柄だという点は念頭に置いておきましょう。
ここまでいくつかの専門用語が登場しましたので、簡単におさらいしておきましょう。難しく感じるかもしれませんが、意味を知っておくと、他の銘柄を見るときにも役立ちます。
- PER(株価収益率):株価が1株当たりの利益の何倍まで買われているかを示す指標です。数値が高いほど、将来の成長への期待が株価に織り込まれていると考えられます。
- PBR(株価純資産倍率):株価が1株当たりの純資産(会社の解散価値に近いもの)の何倍かを示す指標です。1倍を下回ると株価が割安と判断されることもあります。
- ROE(自己資本利益率):会社が株主から集めたお金を使って、どれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。数値が高いほど、資本を有効に活用できていると評価されます。
- 時価総額:株価に発行済株式数を掛け合わせた金額で、市場がその会社全体の価値をどれくらいと評価しているかを表します。
個別株を分析するときは、その会社単体だけでなく、同じ業界の他社と比べてみる視点も欠かせません。証券会社の情報サイトでは、いつもと比較される銘柄として、同じくEC関連やライフスタイル系のD2C事業を手がける企業が挙げられています。業界内での立ち位置や、売上高の伸び率、利益率などを見比べることで、いつもの強みや課題がより具体的に浮かび上がってきます。気になった方は、証券会社の銘柄比較機能などを使って、実際に数字を並べてみることをおすすめします。同業他社との比較は、その会社が「業界の中でどのポジションにいるのか」を把握するための、地味ですがとても効果的な方法です。
配当がないことを理解しておきましょう
いつもは2026年3月期、2027年3月期ともに無配を予定しています。配当を受け取りながら長期保有をしたいと考えている方には向かない銘柄です。会社としては利益を事業拡大のための投資に回している段階であり、株主還元よりも成長を優先する方針だと理解しておく必要があります。
過去には利益が伸び悩んだ時期もありました
2026年3月期は大幅な増益となりましたが、それ以前の期には利益率が思うように伸びなかった時期もありました。ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)も、直近では一般的に望ましいとされる水準にまだ届いていない場面があり、収益性が安定して高い水準にあるとまでは言い切れません。今後の決算で、この改善傾向が本当に続くのかを確認していくことが大切です。
小型グロース株特有の値動きの大きさ
時価総額が数十億円規模の小型株であるため、出来高(売買される株数)が少ない日には株価が大きく動きやすい特徴があります。決算発表や市場全体のムードによって、短期間で株価が上下することも珍しくありません。値動きの大きさをリスクとして受け止められるかどうかは、投資を始める前にしっかり考えておきたいポイントです。
競合の存在と海外展開特有のリスク
EC支援という事業領域は、市場の成長とともに参入する企業も増えており、競合との差別化が今後の課題となります。また、東南アジアなど海外への展開を進めている分、現地の景気動向や為替(円と現地通貨の交換レート)の変動が業績に影響を与える可能性もあります。海外展開は成長のエンジンになり得る一方で、国内だけで事業を行う会社にはない要素にも目を配る必要があります。
最後に、いつもへの投資を検討する際に、初心者の方が確認しておきたいポイントを整理しておきます。
- 2026年8月14日発表予定の決算で、増収増益の勢いが継続しているかどうか
- 主力である協業ブランドパートナーサービスの契約件数や売上が順調に伸びているか
- 東南アジアでの海外展開が計画通りに進んでいるか
- 配当を出さずに成長投資を続ける方針に、自分自身が納得できるか
- 小型株特有の値動きの大きさを受け止められる資金と心構えがあるか
これらのポイントは、いつもに限らず、成長段階にあるグロース株全般を分析するときにも応用できる視点です。ひとつの銘柄を深く調べる経験は、次に別の銘柄を分析するときの土台にもなります。
ここまで、いつも(7694)という会社の事業内容から最新の業績、株価指標、そしてリスクまでを見てきました。EC市場という伸び続ける市場を舞台に、ブランドやメーカーの「売る力」を支える独自のビジネスモデルを持ち、直近の決算では大きな増収増益を達成しています。一方で、無配であることや、過去に利益が伸び悩んだ時期があったこと、値動きが大きくなりやすい小型株であることなど、押さえておくべき注意点もあります。
この記事のポイントまとめ
- いつもはブランド・メーカーのEC事業を丸ごと支援する会社で、売上の約7割を占める協業型サービスが強み
- 2026年3月期は売上高178.7億円、前期比28.2パーセント増と大幅な増収増益を達成
- 2027年3月期も二桁成長を計画しており、東南アジアへの海外展開も進行中
- 無配であること、過去の収益性、値動きの大きさはリスクとして必ず確認しておく
投資というのは、こうした会社のストーリーを知り、自分なりに「これから伸びそうか」を考える面白さがあります。いつもの決算資料や適時開示情報はインターネット上で誰でも閲覧できますので、この記事をきっかけに、ぜひご自身でも一次情報にあたってみてください。次の決算発表(2026年8月14日予定)で、成長のシナリオがどこまで実現しているかを確認してみるのも良いでしょう。
最後にもうひとつ、資産運用初心者の方が陥りやすい誤解についても触れておきます。それは「業績が良い会社の株を買えば、すぐに株価が上がる」という考え方です。実際には、株価はその会社の業績だけでなく、市場全体の地合いや投資家心理、将来への期待値がすでにどれだけ株価に織り込まれているかによっても大きく左右されます。今回のいつものように、直近の決算が大幅な増収増益であっても、その内容がすでに株価に反映されていれば、期待したほど株価が動かないということも起こり得ます。
逆に言えば、業績の中身をきちんと理解したうえで、株価指標と照らし合わせながら「今の株価は割安か、それとも割高か」を自分なりに考える習慣を持つことが、資産運用初心者から一歩抜け出すための第一歩になります。いつもという会社をひとつの教材として、決算資料の読み方や指標の見方に慣れていただければ、この記事の目的は十分に果たされたと言えるでしょう。
本記事は、公表されている決算短信・適時開示資料・複数の情報サイトをもとに作成した情報提供を目的とした記事であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
筆者は証券アナリストやファイナンシャルプランナーの資格を持つ者ではなく、本記事は投資助言には該当しません。株式投資は元本割れを含むリスクを伴います。投資の最終判断は、必ずご自身の責任と判断において、最新の情報をご確認のうえ行ってください。




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記事内のデータ・数値は2026年7月時点の情報をもとにしています。
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